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ロビンソン漂流記はこんな話だった 後編

こんにちは、アラスカ4世です。今回は、前回に続いてロビンソン漂流記の解説を書きました。前回の記事を読むとロビンソン漂流記のあらすじ等が、今回の記事を読むと文脈などがわかると思います!

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)

 

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黎明期の小説

ロビンソン漂流記は、イギリスにおいて小説というものが本格的に書かれ始めた時期の作品でした。それまでもシェイクスピアが書いたような戯曲や、『ベオウルフ』のような叙事詩は盛んに書かれていましたが、小説は主流ではありませんでした。
小説を書くノウハウが確立されておらず、読み手も小説がどんなものなのかよく知らなかったはずなので、前編で触れたように『自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述』というものすごく長くて説明的なタイトルがつけられたのかもしれません。

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多くの作品に影響を与える――プロテスタンティズムからエロ小説まで

前編で触れましたが、この作品はキリスト教プロテスタンティズムの倫理を伝える作品として読まれました。しかし、この小説の与えた影響はそれだけではありません。もっと直接的に、無人島をテーマにした作品が多く作られました。十五人の少年が協力しながら無人島で生活していく『十五少年漂流記』や、逆に多数の少年たちが対立して殺しあう『蠅の王』などがそうです。
『フライデーあるいは太平洋の冥界』という小説はロビンソンが主人公で途中までの展開はロビンソン漂流記とよく似ているのですが、ロビンソンが野蛮人のフライデーを教育して従僕にする『ロビンソン漂流記』とは正反対に、野蛮人のフライデーが西洋文明を象徴する存在として描かれているロビンソンのあり方を変えてしまう内容になっています。 

十五少年漂流記 (新潮文庫)

十五少年漂流記 (新潮文庫)

 
蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)

 

 一人の宇宙飛行士が火星で生き延びようとする映画『オデッセイ』なども、この系譜にあります。無人島での暮らしに思いを馳せるのは楽しいので、ロビンソン漂流記は高い人気を博し、またそういうテーマの作品が多く生まれました。

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……ツイッターをやっていたら、こんなのも見つけました。アダルトなのでリンクをうまく貼れませんでしたが。


作者ダニエル・デフォーの生涯 

『ロビンソン漂流記』の作者ダニエル・デフォーは、黎明期の小説家らしく波乱万丈な生涯を送りました。当初は小説家ではなく政治宣伝のためのパンフレット作者や、ジャーナリストとして知られており、諜報活動にも協力していました。
1688年に即位した国王ウィリアム3世を支持し、ウィリアム3世の死後は後継者の女王アンとトーリー党を風刺したパンフレットを書いたため、逮捕されて晒し台に上げられました。
当時、晒し台に上げられた犯罪者に対して観衆が汚物などを投げるのが普通だったのですが、その代わりにデフォーに対して花と飲み物を与えました。

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その後はアン女王やトーリー党と和解、協力し、イングランドスコットランドの合邦の利を説いて回ったりしました。1707年、スコットランド議会はイングランドとの合邦を決議し、グレートブリテン王国が誕生しました。
彼が『ロビンソン漂流記』を出版したのは1719年のことで、この時すでに59歳でした。これは大成功だったため、続編『ロビンソン・クルーソーのさらなる冒険』、『真面目な省察』が出版されました。デフォーは1731年に亡くなりました。

ロビンソンのモデルになったアレクサンダー・セルカーク

ロビンソン漂流記は、アレクサンダー・セルカークというスコットランド人の体験談を下地にして書かれました。彼は無人島に漂着し、4年間滞在した後私掠船に救助されてイギリスに帰りました。聖書を読んだり、野生化したヤギを捕えたりした点では小説の内容と一致しています。しかし野蛮人とバトルしたり、帰国後に財を成したりすることはありませんでした。セルカークの滞在した島や住居の跡は2005年に発見されており、島はロビンソン・クルーソー島と改名されています。
作者デフォーはロビンソン漂流記が実話であり、ロビンソン本人が小説を書いたという体裁で本を出版しました。

『ロビンソン漂流記』は黎明期に書かれた小説なので、現代の小説ではあり得ないような部分が色々あり、それにもかかわらず無人島でのサバイバル生活というテーマが優れているので現代での鑑賞にも耐える、面白い小説です。この記事や前回の記事で触れていない魅力も色々あるので、気になる方は読んでみてください!

この記事は以上です。読んでくれてありがとうございました。またよろしくお願いします!