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ピピパポピのポパピ はてなダイアリー編

イラストを用いて楽しく歴史を紹介するブログです

ハシシで洗脳? テロ集団? 暗殺教団の謎を追う

ご無沙汰してしまいすみません。アラスカ4世です。金正男が暗殺された事が記憶に新しい昨今ですが、今日は暗殺の話をしようと思います。

英語で暗殺者を意味する"asassin"という単語は、アラビア語大麻樹脂を意味する"Hashishi"という単語が元になって成立しました。これは、十字軍の行われた12世紀ごろの中東に麻薬によって人を洗脳して暗殺者に仕立て上げ、敵の要人を暗殺する暗殺教団が存在すると考えられていたからです。

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山の爺

暗殺教団の話は、アジア各地に24年間滞在したマルコ・ポーロが著書『東方見聞録』の中で言及した「山の爺」のエピソードによってヨーロッパに広がりました。それは、こんな話です。
ペルシャの山中に「山の爺」がおり、楽園のような素晴らしい秘密の庭園を築きました。そして外部の若者を麻薬で眠らせ、庭園に連れて行きます。
薬物によって眠らされていた若者が目覚めると、美しい庭園にいます。若者は秘密の麻薬を与えられ、美女と遊び、庭園に実っているあらゆる種類の果物を味わい、快楽の限りを尽くします。

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そして再び麻薬で眠らされ、気が付くと元いた場所に戻っています。再び楽園に行きたいと望む若者に、山の爺は暗殺を命じ、若者は命と引き替えに暗殺を実行します。死後に楽園に行けると信じながら。

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ハッサン・ビン・サバーフ

この話のモデルになった暗殺者集団は、実在していました。ただし、麻薬によって暗殺者を洗脳していたというのは史実ではなかったようです。暗殺者集団を創設したのは、ハッサン・ビン・サバーフという男でした。1030年ごろにペルシャイスラムシーア派の家に生まれた彼は、30代の時にシーア派の分派であるイスマーイール派に忠誠を誓います。

当時のイスラム教圏では、現代と同じように多くの国がスンニ派シーア派でした。その一方で、イスマーイール派は909年にエジプトでファーティマ朝を建国していました。

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暗殺教団が活躍した1100年ごろのものすごくざっくりとした中東の地図です。一時期イスラム教圏のほとんどを支配していたアッバース朝は弱体化しましたが、名目上はカリフとしての高い権威を保っていました。地図は多分どこか間違えていると思いますが、この地図に関しては細かいミスはご容赦ください。

ハッサンはファーティマ朝に仕えるためにエジプトに向かったのですが、イスマーイール派の内部対立に巻き込まれて死刑を宣告されました。しかし国外追放に減刑され、エジプトを後にしました。

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ペルシャに戻ったハッサンは、権力を手に入れようとします。そのためにアラムートという場所にあるスンニ派イスラム教徒が所有している城塞に目を付けました。彼はまず城塞の周囲の村々をイスマーイル派に改宗させ、さらに城の召使いも改宗させます。そしてスンニ派の城主に追放を宣告し、城を手に入れました。

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ハッサンはスンニ派アッバース朝と、ペルシャを支配しているセルジューク朝を滅ぼすという野望を持ち、ペルシャとシリアのいくつかの山城を支配しました。しかし、ペルシャ全土を支配するセルジューク朝と比べると、数の面で大きく劣っていました。

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そこで1092年、ハッサンの部下の暗殺者がセルジューク朝の宰相ニザール・アルムルクを暗殺します。以後ハッサンは敵対する要人を次々に暗殺していき、歴史上初のテロリスト集団が誕生しました。彼らはハッサンを国外追放したエジプトの宰相アル・アフダールや、十字軍で活躍し、エルサレム王国の王になるはずだったモンフェラート候コンラッド1世なども暗殺し、中東の国々から恐れられるようになります。公の場で、ハッサンらイスマーイル派を批判する事は難しくなりました。

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しかし暗殺によって周囲から恐れられ、憎まれ、警戒された暗殺教団は勢力を大きく拡大する事は出来ず、結局モンゴル帝国やエジプトのマムルーク朝によって滅ぼされてしまいました。1273年、シリアにあった暗殺教団最後の城塞がマムルーク朝に降伏し、政治勢力としての教団は消滅しました。

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暗殺教団の登場する作品

この暗殺教団の存在は、マルコ・ポーロによってヨーロッパに広められ、誇張された形で広まり続けました。
アサシンクリードというゲームは暗殺教団をモチーフにしていますし、fateにもアサシンのサーヴァントとして山の爺が登場します。

また、19世紀にアレクサンドル・デュマが書いた傑作小説『モンテ・クリスト伯』にも暗殺教団の話が登場します。
モンテ・クリスト伯』は、陰謀によって投獄された主人公のエドモン・ダンテスが脱獄してモンテ・クリスト伯爵を名乗り、自らを陥れた3人への復讐を行う、という話なのですが、モンテクリスト伯はなんと、『山の爺』の話をしながら仲間と共にハシシ入りのジャムを舐め、ドラッグパーティーをするのです。アラスカ4世はたまたま中学生の時にこれを読んだので、びっくりしました。

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以上、暗殺教団の話でした。次は、十字軍の時代に誕生した宗教騎士団(テンプル騎士団聖ヨハネ騎士団チュートン騎士団)の記事を書こうと考えています。書けたらそれも読んでもらえるとうれしいです。