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ロビンソン漂流記はこんな話だった! 前編

ご無沙汰してしまいすみません、アラスカ4世です。今回は、ロビンソン漂流記という小説の話を書きました。時事ネタではないですが、突っ込みどころの多い有名な小説について面白おかしく解説したつもりなので読んでください!

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遭難、海賊、奴隷貿易……波瀾万丈なロビンソンの生涯

ご存じの方も多いかもしれませんが、1719年に刊行されたロビンソン漂流記は主人公ロビンソン・クルーソー無人島に一人で漂着して、無人島でサバイバルをし、無人島から脱出する話です。 

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)

 

 では終始無人島の話をしているのかというと、そうでもないです。新潮文庫の『ロビンソン漂流記』は360ページもあるのですが、53ページめぐらいで無人島に漂着します。それまでのロビンソン・クルーソーは、大西洋を股に掛けていろんな事をやっています。

ロビンソンはイングランドのヨークで中産階級の家に生まれ、なんとなく船に乗って外国に出て行こうとします。船は嵐にあって難破しますが、ロビンソンらは助かり、イングランドに戻ります。
ロビンソンは次に西アフリカのギニアに行く船に乗り、商品を交易することである程度の財を成します。また同じような船に乗ってギニアに向かおうとしますが、イスラム教徒の海賊に捕まって奴隷になってしまいます。
ロビンソンはやがて主の海賊を出し抜いて筏で脱走し、ライオンやヒョウを撃ち殺したりしながら航海をします。そしてポルトガルの船に救助され、その船に乗ってブラジルに向かいます。ブラジルでは土地を買って開墾し、農園を経営します。奴隷を買ったり召使いを雇ったりして規模を拡大していきますが、それには飽き足らず、欲を出して、黒人奴隷を手に入れるために船でアフリカに行く事にしました。しかし途中で船が難破し、ロビンソン以外の船員は死にます。そしてロビンソンは生き残り、無人島に漂着したのでした。

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ここから本編ともいうべき無人島でのサバイバルが始まるわけですが、ここまででわりとお腹いっぱいになりますね。

無人島へ……わりと恵まれた初期条件

無人島に漂着したロビンソンが最初にしたのは、難破した船から物資を島に引き上げる事でした。船には食料の他に、銃と火薬、ラム酒、工具、服などが残っていました。こうした物資に恵まれ、しかも筏で海賊のところから脱走したりした経験を持っていたからこそ無人島で生き延びる事ができた。作者はそう言いたかったのでしょう。素人が着の身着のままで無人島に漂着して生き延びるよりはリアリティーがありますね。
そしてここからサバイバルが始まります。洞穴を住居にしたり、山羊を捕まえたり、日記を付けたり、麦や米を栽培したりします。

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やがて近くの島に住む野蛮人(原文ママ)が現れます。召使いが欲しいと思ったロビンソンは食人の習慣を持つ野蛮人と戦い、彼らに殺されそうになっていた捕虜の野蛮人の一人を救出します。そして彼にフライデーという名前を付けて、従僕にしました。

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ロビンソンはさらにフライデーを教育して一緒に野蛮人と戦い、捕虜になっていたフライデーの父親と、スペイン人を助けます。
4人になったロビンソン一行は、やがて島の沖に泊まったイギリス人の船に乗って、イギリスに帰国します。
その後は、ブラジルで開墾した農園がどうなったのか確認するためにポルトガルに行ったり、そこから陸路でスペインとフランスを通ってイギリスに戻ったり、道中で熊や狼とバトルしたりします。

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農園からの収益で金持ちになったロビンソンはイギリスで平和に暮らしますが、無人島の様子が気になって再び航海に出ます。さらに世界中を旅して、この様子が続編になりました。

この小説には、色々なみどころがあります。

みどころ1:奴隷制

奴隷制度が存在していた時代の話なので、奴隷の概念が平然と登場します。そもそも序盤にはロビンソン自身が奴隷にさせられており、ロビンソンと一緒にそこから脱出した奴隷の少年は、十年後に解放するという条件付きでポルトガル船の船長に奴隷として買い取られてしまいます。
そしてアフリカに奴隷の買い付けに行こうとしたり、野蛮人のフライデーを奴隷にしたりします。
当時の人々は、奴隷制に関して大きな問題意識を持っていなかったので当然ですね。

みどころ2:キリスト教プロテスタンティズム

ロビンソンは当時のほとんどのイギリス人と同じようにキリスト教徒で、島に流れ着いた時も難破船から聖書を持ち出します。そして神に祈りを捧げ、規則正しい生活を行い、日記を付けることで、誰もいない無人島での精神の平静を保ちます。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を著した社会学者のマックス・ウェーバーは、ロビンソンが合理主義的なプロテスタントの倫理観の持ち主だったと評しています。

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みどころ3:やたらと長いタイトル

ここまで小難しい話でしたが、ここではゆるい話をします。文字が詰まってますが中身はゆるいです。
ロビンソン漂流記の正式なタイトルは、『自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述』(The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner:Who lived Eight and Twenty Years, all alone in an un‐inhabited Island on the Coast of America, near the Mouth of the Great River of Oroonoque;Having been cast on Shore by Shipwreck, wherein all the Men perished but himself. With An Account how he was at last as strangely deliver'd by Pyrates)といいます。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない』や、『名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードネクロノミコンを読んだら』、『リアルでガチな天才が異世界に転生しても天才魔法使いになって元娼婦嫁とイチャイチャする話。』みたいな最近のライトノベルよりもずっと長いですね。

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長くなってきたので、この記事は一旦ここで終わります。後日公開する後編では、時代背景やロビンソンクルーソーの影響を受けた他の作品などの話を書く予定です。公開したら読んでください!

以上、ありがとうございました。

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)